デジタルマーケティングでは顧客IDの統合が必須に

オンラインからオフラインへの送客(O2O)が始まり、オンラインとオフラインがシームレスに繋がり(オムニチャネル化)始め、今ではオフラインが次第に無くなりつつある(アフターデジタル)と言われております。

前の記事では、3rd Party Cookie がデジタルマーケティングに与えた影響について詳しく説明しました。こちらの記事では、今後のデジタルマーケティングにおいてより重要度が増した顧客ID統合について解説いたします。

オンラインの世界がオフラインを飲み込む

今後のデジタルマーケティングについての未来像が示された『アフターデジタル』において、オンラインがオフラインの世界を飲み込むOMO(Online Merges with Offline)という概念が提唱されました。

IOTの進化や5Gの一般化によって、この現実世界をネットが文字通り「網羅」するようになります。それに応じて、マーケティングにおけるタッチポイントも無数に増えていくことでしょう。

つまり、さまざまな面がオフラインを軸にオンラインを活用する発想を、全てがオンラインである前提に変える必要があるのです。

小売ビジネスへのインパクト

ある小売ビジネスを例にあげましょう。

ひと昔までは、ECに在庫があるのに、実店舗には在庫がないために実店舗で販売できずに販売機会を失う、ということがよくありました。

本来的には、実店舗の店員がECをおすすめすればよいのですが、それが叶わないのです。

というのも、実店舗とECでは別々に売上を計上してそれぞれに販売目標を持っているため、実店舗にとってECが競合となり、店員がECでの購入をすすめられない、という構造的な問題があるためです。

実店舗がフランチャイズ経営である場合はこの傾向が顕著でした。

しかし、ひるがえって現代、資本力を持つ事業主の一部は積極的にオムニチャネル化戦略を推進し、これらの障壁を取り除く事に成功しています。

顧客IDを統合して実店舗での体験とECでの体験を一気通貫で計測できるようにすることで、実店舗とECを「競合する販売店舗」ではなく、「顧客体験における接点の一つ」と捉え直したのです。

リアル店舗とECは競合であってはならない

たとえば、ECと店舗がシームレスになると、店舗の店員はECに在庫が残っていればECサイトでの購入をお勧めしたり、注文を代行する事までできるようになります。

また、ECで注文を躊躇したお客様は、店舗で実際に商品を手に取って確認しその場で購入して持ち帰ったり、その場でスマホで注文して商品を自宅へ配送する事もできます。

こうした具合に、店舗とECがそれぞれの強みを活かすことで、お客様のニーズに柔軟に対応できるようになったのです。

そして、このような実店舗とECの位置づけの変化をもたらした背景には、「顧客IDの統合」があります。

顧客IDの統合のインパクト

そもそもリアル店舗とECが競合していた根本的な原因は、ECと店舗が別々の世界に存在していたからです。

つまり、

  • リアル店舗で接客をうけた人物がECで買ったこと
  • ECで商品を下調べした人が店舗で買ったこと

といった事実を裏付けられなかったため、競合関係を脱することができなかったのです。

そこで一転、顧客IDを発行し、ECではWEBログイン、実店舗ではアプリ提示で個人を特定できるようになると、最終的に購入に至るまでに実店舗とECで相互に役にたっていたことがわかり、競合関係を脱することができた、というわけです。

(もちろん実際にはこれほど単純ではなく、さまざまな理由で実店舗とECが反目せざるを得ない、ということもあるでしょう)

こうした流れを受け、これまでECでの顧客の購買履歴を把握できていても実店舗での購買情報は把握できなかったり、店舗毎に別々に顧客を管理していた事業者も、オムニチャネル化に成功した企業から続々と顧客IDを統合を進めるようになりました。

顧客IDの統合に成功した事業主は購買履歴を顧客一人一人個別に管理しやすくなります。ECでもアプリでも顧客の好みを把握でき、ベストなレコメンドや接客できる様になります。

そして、それは実店舗でも情報は共有できるため、店員はそのお顧客の好みの他、良く購入いただいている商品の価格帯なども把握できるのです。日本は世界に類を見ない程、接客による顧客体験を大切にしていると思います。この接客にも、顧客IDを統合化した顧客情報が役立つのです。

デジタル化が進むと、顧客のデータは勿論購買履歴だけではなく、サイトの閲覧情報など様々なデータを集めやすくなります。これらのデータを活用するために、データをCDPで収集・統合し、MA/CRMでアプローチを図るのです。

実店舗でのID計測ではスマホアプリが活躍する

また、この顧客IDの統合を進めるうえで、スマホアプリは非常に重要です。

というのも、実店舗での顧客ID統合を進めるうえで、スマホほど個人の特定に優れた端末がないため。スマホアプリでQRコードで顧客IDを特定できる仕組みがあることで、IDごとの「来店」や「実店舗での購入」の計測が容易になりました。

こうしたデータをもとに、One to One のコミュニケーションもより精緻に行えます。

たとえば3カ月間来店いただけていない休眠顧客には、お客様の購買履歴等のデータを元にした個別のアプローチをベストなタイミングで行うシナリオ設定を行ったり、毎月通っていているお客様には購入回数を上げるためのクーポンやクローズドキャンペーンを実施したりできるのです。

スマホで顧客を検知できるようにすることで、「実店舗の存在価値」がより明確になり、実店舗を「デジタルマーケティングにおけるタッチポイントの一つ」としてデジタルマーケティングの最前線基地として活用できるなりました。

スマホによって逆説的に、アナログの極みである実店舗を持つ企業こそが、デジタルマーケティングが浸透した世界で圧倒的な優位をもつことになったのです。

そして別の観点にはなりますが、スマホアプリのもう一つの重要な観点が、スマホアプリはほぼ唯一のプッシュ型コミュニケーションが取れる顧客接点であるということです。

スマホでは位置情報など、PCではとりにくいトリガー情報をもとに、顧客ごとのベストなタイミングに合わせてプッシュ通知を届けることができます。これがデジタルマーケティングを変える大きなインパクトの一つです。

小売ビジネスにおいて、顧客IDを統合してデジタルマーケティングを実施する場合はスマホアプリの用意が必須であるといえるでしょう。

WEBに閉じず、リアルでの動きまで捉えた設計を

ここまで解説してまいりましたように、これからのデジタルマーケティングでは、

  • 顧客IDを統合することで、リアルでもネットでも動きを計測できるようにする
  • スマホアプリを活用し、リアルでの活動のデータ収集とプッシュ送信経路の確立を実現する
  • CDPやMAを活用し、データ分析やコミュニケーション自動化を進める

といったことが非常に重要になってまいります。

次の記事では、リアルからネットの世界まで一貫した顧客体験を設計、改善するために必須となる「カスタマージャーニー」策定の重要性について説明いたします。

次の記事:デジタルマーケティングにおけるカスタマージャーニーの重要性

  • 博報堂アイ・スタジオ
    藤本 貴章ふじもと たかあき
    2016年に博報堂アイ・スタジオに入社。プロデューサーかつプロジェクトマネージャーとして、複雑なシステムや多数のステークホルダーが絡む大規模案件に従事。顧客ビジネスへの貢献と、プロジェクトマネジメント観点を両立させたプロジェクトデザインを得意とする。PMBOKフレームワークをベースに、案件特性に応じたプロジェクト計画をオーダーメイドすることで、安定的なプロジェクト進行を実現し、高品質なソリューションを提供している。

デジタルマーケティング領域で支援できること